流木アート制作・販売「アトリエ かくれんぼ」

【人生編】ひと夏の夢

そのころから私たちと同じ匂いのする若者たちが集まり始めました。
高校の時の同級生をも巻き込んでしまいました。
名前は平田と言います。
この人間とはこのあとも人生の歯車を削りあう仲になりました。

そんな中、毎日ぼろぼろになりながら頑張って売上もそこそこいくようになり、青物横町でも結構評判でした。

そんなある日、以前丁稚奉公で働いていた八百屋の親父から

「湘南海岸で海の家をやってみないか?儲かるぞ!」

と甘い声をかけられ、ひと夏ですがやってみることにしました。

だって、あの湘南ですよ、湘南(うすら笑い)

故郷の天草の海しか知らない私にとって「湘南」という響きがどれだけエキゾチックに感じたか!

矢沢永吉の「時間よ止まれ」を聞きながらその日が来るのを指折り数えて過ごしておりました。

いよいよ海の家デビューです。

内容は食堂です。
しかし所詮、素人の集まりです。できる料理は限られています。
メニューはラーメン、牛丼、かき氷だけです。

いざ始めてみると夢と現実の大きなギャップを感じました。

人が浜辺でワイワイ、キャーキャーと遊んでいる時には私は厨房に閉じ込められ熱いラーメンを作っています。
砂が入ってこないように窓は閉め切りの中で…。(暑いというよりも熱い!)

夜は折りたたみのサマーベッドで倒れこむように寝ておりました。
浜辺に出るのは朝早く海水浴客がくる前に浜辺を掃除するときだけでした。
風呂は毎日、裏にある水道でのシャワーです。

それでも「お金のためや」「銭を稼がねば」とがむしゃらに毎日ラーメンを作っておりました。

その汗と涙を簡単に流してしまう日が来ます。

そうです、台風です。

それもとてつもなくでかいのが…。
自然の力、威力はすごいものです。

一晩、いや時間でいえば2時間くらいの出来事でした。

なすすべもなく一瞬のあいだに建物ごと海の藻屑と消え去りました。

私たちの希望も…。

こうして22歳の夏は終わりました…(TT)

そう、また人生の歯車がひとつ欠けました…。

ちっくしょ〜

つづく